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2019.09.20

アサヒビール式イノベーション – WeWorkをトラディショナルな企業文化変革の起爆剤に

  • Interview
  • イノベーション創出

今回お話を伺ったのは、アサヒビール株式会社事業推進室担当部長の浜田晃太郎氏、同担当副部長の三橋憲太氏、同担当副部長の濱田美晴氏です。

アサヒグループホールディングス傘下で「スーパードライ」などの主力商品を扱うビール大手アサヒビールは、創業130年になろうとする歴史ある企業です。その中で新たな事業を模索する事業推進室の一部がWeWork東急四谷に入居されています。

今回は、変化の激しい事業環境にあって、主力事業に甘んじることなく、強みを生かした新事業に挑む部隊の活動の場としてWeWorkを選んだ理由と、現在進行するプロジェクトの進捗について伺いました。

新役員肝いりの部隊が WeWork に入居
手に入れたイノベーションのカルチャー

― WeWorkに入居するまでの経緯をお聞かせください

三橋氏(以下、敬称略):当社は2018年9月、32年ぶりに外部から役員を招きました。専務の松山一雄です。アサヒビールは「スーパードライ」を軸に存在感を示してきましたが、松山の就任は、激変する事業環境にあって、変化に対応する当社の機運の表れだと感じます。

今回、われわれの WeWork 入居を主導したのは松山自身です。松山は当社に加わり、アサヒビールは自前主義が強く新しいことに取り組むスピードが遅いと感じ、経営全般、中でもマーケティングの領域で改革を起こしたいという思いから、専務直轄の「事業推進室」を設けました。決裁も予算執行も自身で行う、当社としては異例の組織です。

そして、当社が積極的に異文化と接触して新たな刺激を受けるためには、 WeWork のようなカルチャーが好適であると感じて入居が決まりました。

― WeWorkにはどんな体制で入居されたのでしょうか

浜田:事業推進室の陣容は全部で8名です(2019年8月現在)。全部署から中堅の優秀な人材を集めた横断型の構成で、経営企画から商品開発、生産、営業など当社の縮図のような組織なので、社内では「ミニアサヒ」と呼ばれています。

今回 WeWork に入ったのは、開発・研究・技術戦略を担当する私と、経営企画・営業戦略担当の三橋、そして、デジタル・マーケティング戦略担当の濱田です。4名で入居しましたが、これから進捗に合わせて必要な人材を補充することになると思います。ここから新しいきっかけをつかみ、ワンストップで本社につなぐ。それがミッションになります。

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アサヒビール株式会社事業推進室担当部長の浜田晃太郎氏

AXS(アクロス)プロジェクト発進
WeWork から内外に発信する「変化の意思」

― WeWork での活動をお聞かせください

濱田:WeWork 入居に当たり格別のKPIは定めていません。松山からは、「まずは何が必要なのか探ってこい」と言われています。言わばリサーチフェーズです。

ただ、WeWork東急四谷がオープンした3月から4カ月ほど経って、初期の目的として掲げていたネットワーク構築だけではない“何か”が必要になっていました。

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同担当副部長の濱田美晴氏

三橋:WeWork に入居して、いろいろな会社のイベントに参加したり共催させていただいたりしている中で、その会社の強みで当社の課題を解決できるのでは、と担当部署に引き合わせるなど、化学反応を促進できないかと考えて活動してきました。それまで当社は、他の業界と接触する機会が極端に少ない環境でしたから、とても新鮮です。

濱田:社内的に「何ができるのか?」という雰囲気が高まっていたのも事実ですが、一方で対外的にも、「アサヒビールさんはどんな目的で WeWork に入られたんですか」と尋ねられて戸惑うこともしばしばありました。

それで「そろそろ何か目に見えるものが必要ではないか」と感じるようになりました。WeWork に入る方は、イノベーションを起こすという明確な意思をみなさん持っているんだなと思い知らされました。

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同担当副部長の三橋憲太氏

―今まさに実行している「AXS(アクロス)」プロジェクトについて教えてください

三橋:濱田が発想し、スタッフ間で検討の末に生み出されたのが、今回のAXS(アクロス)というプロジェクトです。これは、当社が抱える課題を、WeWork のメンバー企業様と共有し、一緒に解決してくれるパートナーを募るというものです。単にアイデアを募るだけではなく、提案者と共にビジネスを行い、しっかりと利益を出すことを目指しています。

濱田:AXSとは「ASAHI CROSS PROJECTs」の略称で、テーマはずばり「アサヒのアキレス(腱)をWeWork企業で解決する」ことです。設定した課題は二つです。

1) お酒を飲まない人に、お酒を飲むようになってもらいたい(0⇒1)

2) お酒離れを抑止したい、もしくは離れた人にも何か提案したい(100⇒10⇒100)

当初社内からは、外部に課題をさらけ出すことの是非や、「提案を持ってこい」と“上から”に映るのではないかなどの懸念が出されましたが、専務の松山からは、「問題ないから取り組め」と背中を押してもらいました。

専務に相談してから3日ほどで WeWork のメンバーネットワーク(WeWork専用アプリ)に投稿しました。これまでの当社のカルチャーからは考えられないスピードにワクワクしました。

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浜田:今回のこの取り組みでアサヒビールは、「自社だけが利することを考えているわけではない」という思いがあります。自分たちが抱える課題は、酒類業界全体が共有できるテーマでもあるはず、との信念があります。

三橋:AXSの試みを始めて2週間ほどで数件の打診があるなど反応は上々ですが、意図がちゃんと伝わっていない部分もあり、募集要項の表現など、改善を重ねながら取り組んでいます。

こうした点についても専務の松山は「スモールでもいいから始め、失敗したら修正すればいい。そして、本当にダメだったらやめればいい」と言ってくれます。

浜田:これまで当社には、新しい提案をすると「既存事業とのハレーション(悪影響)が気になる」といった理由で思考停止してしまうところがありました。こうした意識を変え、アジャイルに物事を進める流れを、WeWork でつくれるのではないかと期待しています。WeWork にいる今は、孵(ふ)化するまでのゆりかご期だと思います。


まとめ:Innovation Formula実行委員会(MGT田口雅典)
撮影:小瀬川理恵