WeWork x ZeBrand
2019.11.26

入居後1年半でスピンオフ!モリサワ新規事業「ZeBrand」のWeWork活用事例とイノベーション創出のプロセス

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今回お話を伺ったのは、株式会社ZeBrandの菊池諒さん(Chief Executive Officer)と赤生悠馬さん(Sales Director)のお二人です。

創業1924年から続くフォントメーカー株式会社モリサワ内に、社長直轄のイノベーション創出部門として「MORISAWA BRAND NEW Lab(以下MBNL)」が発足したのは2017年10月のこと。

翌年2月の WeWork 日本進出時より WeWork へ入居し、それからわずか1年半で、アイデア創出から市場への投入に至るまでを行い、北米市場をターゲットとしたブランディングをオートメーション化するWebサービス「ZeBrand」(ズィブランド)事業にてスピンオフを実現。ローンチ後約6ヶ月間で、ユーザー数を2万ユーザー獲得し、American Express × WeWork ピッチコンテストでもグランプリを獲得するなど、まさに今注目のスタートアップです。

今回は、そんなZeBrandのお二人に、大企業からイノベーティブなサービスを生み出すための秘訣や WeWork の活用方法について、伺いました。

決め手は「イノベーション創出3条件」

ーまずは御社の事業内容を教えてください

菊池氏(以下敬称略):私たちが提供している「ZeBrand」は、スタートアップや新規事業創出チームのためのブランディングをオートメーション化するWebサービスです。

Webサービス上で、5ステップほどの簡単な質問に回答していくことで、企業のカルチャーやミッション、コアバリューと共に、ブランディングに必要な要素を含んだ「brand toolkit」を即時に自動生成し、ビジュアライズすることができます。独自のアルゴリズムとAIによってサジェストされるコーポレートカラーやフォントなど、ブランディングに必要な素材をチーム内で共有できます。

ZeBrandさえあれば、起業間もないリソースや時間、予算、ブランディングに関するスキルや知識の十分でないスタートアップでも、コストも時間もかけず、すぐにブランディングを開始することができます。

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Chief Executive Officer 菊池諒さん

ー WeWorkへの入居背景を教えてください

菊池氏:そもそも株式会社ZeBrandという会社は、95年続くフォントメーカーである株式会社モリサワの新規事業部門として発足した「MORISAWA BRAND NEW Lab」が母体です。MBNLが発足した2017年10月当初、われわれもモリサワ本社(飯田橋)で働いていましたが、相前後して WeWork が日本に上陸しました。その以前にもニューヨークの WeWork を利用していた時期があり、日本でもWeWorkを利用したいと考えました。

ー入居の決め手を教えてください

菊池:早期に新規ビジネスを立ち上げるためには、3つの条件をクリアする必要があると考えていました。

1つ目は、本社(モリサワ)と物理的な距離を取ること。イノベーションのセオリーとして、既存事業と物理的な距離を取り、イノベーティブな環境に身を置くことは重要であり、本社内でその環境を実現するのは、物理的にもマインド的にも難しいと考えました。

2つ目は、業界の枠を越えた企業やパートナーとのネットワークを構築できること。特に私たちは日本ではなく、グローバル展開を前提としたビジネスを検討していた為、WeWorkほど適した環境はないと考えていました。

そして3つ目は、企業・サービスのパブリシティを考えたとき、情報感度の高い方々が集まるコミュニティを活用すると共に、メディアでの露出機会を増やすこと。これは、本社との良好な関係を継続するためにも、第三者からの承認やエンドースメントが非常に重要になるためです。

WeWork はこの3条件を全て満たしていました。

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WeWork 丸の内北口に構えるZeBrandのプライベートオフィス。写真に写っているトロフィー型ネオンサインは、American Express × WeWork共催のピッチイベントで優勝した時の賞品

本社の理解を得るために必要な行動とは

ー入居に当たり、モリサワ本社からの理解はどのように得たのでしょうか?

赤生氏(以下敬称略):最初は少なからず反発はありました。これはモリサワという会社だけに限らないことですが、イノベーション創出に携わる部署は、他部署から見ると特別扱いを受けているように映ります。コワーキングスペースのようなオープンな環境で働くこと自体が羨みの要因にもなりかねません。

しかし、さきほどの WeWork が実現する3条件は、イノベーション創出には不可欠です。そこで当初(2018年2月〜)は、まずはトライアルとして、2カ月限定で WeWork アークヒルズサウスに入居する承認を得ました。

菊池:入居後は、社内に向けて WeWork という場にいる必要性を早期に証明するためにもWeWork の各拠点を回ったり、積極的に新たな業界の方々とのネットワーキングを行い関係を築き、「こうした方々と共同でワークショップを実施した」「こんな案件につながった」など、経営陣へも随時、報告しました。

中でも、テレビ放送で WeWork が取り上げられる際に、入居企業の一つとして取材を受けたことは大きな収穫でした。新規事業の立ち上げ段階でしたので、もちろん単体で取材がくるような状況ではありませんでしたが、NHKにて歴史ある会社の新規事業の取り組みとして大きく取り上げられたことは大きなインパクトがありました。

そうした成果報告に加え、経営層を WeWork に招き、自身の目で見て体感してもらいました。環境のみでなく、外部の企業や入居者の方々と普段からどのようなコミュニケーションをとり、関係を築いているかを見てもらい、徐々に本社の理解を深めていきました。

赤生:特に経営層が視察に来る効果は大きかったと思います。WeWork は開放感、コミュニティに特徴があります。3条件にもあったようなイノベーティブ空間、ネットワーキング環境を、一目見ただけで感じ取ってもらえたと思います。

【関連記事】【三菱自動車工業・QUOカード・ZeBrand登壇】大企業がWeWorkで実現する新規プロジェクトとは? -イノベーション創出の秘訣に迫る

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Sales Director 赤生悠馬さん

ー入居翌年の2019年10月には日本法人と米国法人を設立。わずか1年半ほどでスピンオフを実現されています。スピンオフの理由とは?

菊池:私たちが常々考えているのは、事業創出には「ビジョン」「ミッション」「コアバリュー」といった要素が不可欠であるということです。ブランディングのオートメーションサービスであるZeBrandでも、ユーザーにそれらの項目を入れていただいますが、そこには「単なるデザインのオートメーションツールという概念ではなく、企業カルチャーを醸成するソリューションをつくりあげ、志のある企業を応援したい」という思いがあります。

ZeBrandに関しても同様に「ビジョン」「ミッション」「コアバリュー」を考えたとき、
モリサワ本社のこれらの項目とは必ずしも一致しない部分がありました。目指すべき方向性を理解し、お互いのためにも早い段階で会社を分ける必要があったというのが、わずか1年半でスピンオフに踏み切った理由です。

海外市場開拓ー受け身体質から脱却し自分から変わる

ZeBrandは北米市場をターゲットにされています。WeWorkの海外拠点はどのように活用されていますか?

菊池:これまで、ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコ、オースティン、パリ、ベルリン、シドニーなど、WeWorkの海外拠点を数多く訪問しています。WeWork を拠点とし、各国のイベントなどを通じグローバルネットワークを拡大してきたと言えると思います。

ZeBrandは北米のみならず豪州、欧州圏のスタートアップへ向けても市場を拡大していますので、現地で出会った方々に実際に利用してもらい、喜ぶ顔を真近で見れる機会も本当に貴重だと思っています。

年齢層、国籍、業界など多様性にあふれた WeWork コミュニティに入ることで、コミュニケーションの質が向上し、入居から間もなく国内外合わせて数百人規模のコネクションを獲得しました。

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ー2019年2月のサービスローンチ以降、これまで、どのように北米市場を開拓してきましたか?

菊池:2019年3月にはオースティンで開催されたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)に出展し、そのタイミングと合わせて、ニューヨークの WeWork(175 Varick Street)でも20名ほどを集めたイベントを開催しました。サービスのプロモーションはもちろんですが、それらはスタートアップの方から私たちが提供するサービスに対して、多くのフィードバックを得る場にもなっています。

またパートナーシップの観点では、例えばニューヨークのブランディングエージェンシーでの経験を持つ方にチームに加わっていただき、サービスのクオリティーを高めることができました。他にWebウェブマーケティングのアドバイスをしてもらっている入居企業の方などもいますね。

ー海外における市場開拓やパートナー探しにおいて必要になる心得は?

菊池:日本的文化の観点でいうと「WeWork さんが何かしてくれる」みたいな受け身体質になりがちです。しかし、どんなコミュニティでも「自分たちから価値を提供する」「コミュニティへ貢献していく」という意識が必要だと思います。

WeWork には手に入れようと思えば、いくらでもあらゆる方向への可能性を獲得できる土壌があると思うので、自らが貢献できる箇所を探して信頼関係を築き、パートナーやコミュニティの仲間達と共に成長していく、というスタンスが重要だと考えています。

求めていた環境が明日からでも使える状態に

ー国内のWeWorkではどのようなコミュニティ活用を行っているのでしょうか。

赤生:私は趣味で肉体トレーニングを行っているのですが、WeWork アークヒルズサウスに入居していたとき、あるコミュニティマネージャーの方に話したことがきっかけとなり、その後 WeWork 各拠点でフィットネスイベントを定期開催するようになりました。私の名前を取って、イベント名は「AKOZAP」です(笑)。

ZeBrandやモリサワの認知度向上の場としても活用しています。新規事業やスタートアップの場合には、チームや組織自体を知ってもらい、応援してもらえるような環境も非常に重要になるので、このようなイベントを通じてもいくつかのコラボレーションも生まれています。

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赤生さんとAKOZAP参加者の皆さん

ーお二人が感じる「WeWorkの利点」を教えてください

菊池:われわれのような新規事業創出のチームが求めている環境が明日からでも使える状態にあるのは、本当に素晴らしいことだと思います。WeWork の方、入居企業の方、そして私たち ー「We」に関わるみんなが同じ方向を目指しているからこそ快適に過ごせる。

「毎日が同じことの繰り返しじゃない」ことをポジティブに捉えられる方なら、こんなにいい環境は他にはないと思います。

赤生:アドバイスを含むコミュニケーションが身近にしかも短時間で完結するのは助かっていますね。例えば何か重要な英語の文章を見てもらうにしても、手の届く場所に親身になって相談できる仲間がいる。

また、新たな価値の検証を行う際にも、フィードバックもその場ですぐに得られる。大きな会社で働いていると、業界の前提ありきで考えてしまったり既成概念に捉われたりと、本当の意味でのユーザ視点のフィードバックにならなかったりとなかなかこうはなりません。

ー最後に今後の展望を教えてください

菊池:現在ZeBrandは無償のβ版をリリースしていますが、今後は有償版へも移行可能なオフィシャルリリースを控えています。世界中の方々へブランディングの価値を届けられるよう、今後も国内外の WeWork コミュニティを存分に活用し、市場を拡大していきたいです。


取材:Innovation Formula実行委員会(MGT田口雅典、稲垣 章)