
公開日:2021.02.10 | 更新日:2022.05.17
従業員満足度(ES)を高めるために企業ができる取り組みとは?
働き方の多様化や人材の流動が活発に進んでいる中で、「従業員満足度(ES)」が注目されています。従業員の業務に対する満足度を表す指標ですが、企業にとっても経営や業績に影響することから、重視しなければなりません。
本記事では、従業員満足度とは具体的にどのような指標であるのかに加え、混同しやすい「エンゲージメント」との違いを解説します。さらに、従業員満足度を測る方法や、従業員満足度を高めるために企業がするべきこともご紹介します。
従業員満足度とは?
従業員満足度とは、職場環境における業務のやりがい、人間関係、ワークライフバランスといった要素によって評価される指標です。英語では、「Employee Satisfaction」と呼ばれ、頭文字を取った「ES」と表現することもあります。
従業員満足度は、企業経営との直接的なつながりを持っている点が特徴です。従業員満足度が低下することによって「企業全体の生産性」「人材の流動」「顧客満足度」に対して影響を与えるため、企業としても優先しなければならない要素といえます。
「従業員満足度」と「エンゲージメント」の違いとは?
従業員満足度を高める際に注意しておきたいのが、エンゲージメントとの違いです。まず従業員満足度とは、企業組織や業務内容、職場での人間関係といった要素の満足度を指標として表すものです。一方でエンゲージメントは、従業員と企業とのつながりが意識されており、従業員が企業に対して貢献したい気持ちを指標化しています。
つまり、従業員満足度とエンゲージメントの違いは、前者がシンプルに満足度を表す指標であるのに対し、後者は従業員が企業のために働きたいという意欲や姿勢を表している点です。どちらの指標に関しても、企業全体における生産性や従業員のモチベーション向上と関係がありますが、違いを十分に把握した上でどのような施策を行うか検討することが重要となります。

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従業員満足度を測る方法
従業員満足度を高めるには、まず現状としての満足度を測ることから始めましょう。具体的な測定方法として、「従業員へのアンケート」と「ポートフォリオ分析」の2つがあります。
方法① アンケートの実施
従業員の満足度を測る方法として、アンケートの実施が挙げられます。アンケートは、各項目に対して数値することで、従業員が現状どのくらい満足しているかを測定できるのがメリットです。また、数値による測定を行うことによって、従業員がアンケートに回答する時間を最小限に抑えられます。細かく分析をするためには、記述式のアンケートを同時に行うのも一つの手でしょう。
方法② 従業員へのインタビュー
具体的な回答を得るためには、従業員へのインタビューを実施することも必要です。アンケートでも従業員全体の満足度を測ることはできますが、インタビューでは従業員一人ひとりが思っていることを詳細に聞き出すことができます。
ただし従業員へのインタビューは、個人が特定されないようにプライバシー面を配慮しましょう。また、規模の大きい企業では、すべての従業員をインタビューの対象にすると時間がかかってしまうため、不満を抱いていそうな従業員を選んだり、無作為に数人選んだりし、効率的に活用しましょう。

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従業員満足度の高い企業の特徴
従業員満足度の高い企業には、共通する特徴があります。業務内容、職場環境、企業そのものへの愛着心が強い従業員が多く、離職率が低いことが挙げられます。また、従業員が企業のビジョンや目標を共有しながら働けることや、社会の変化に合わせながら働ける環境が整っています。
特徴① 離職率が低く、在籍年数が長い
従業員満足度の高い企業の特徴として、従業員の離職率が低く、在籍年数が長いことが挙げられます。現状の業務内容や働き方、人間関係の不満が少なく、従業員にとって働きやすい職場環境になっていることが理想的です。
満足度の高い従業員は、ほかの企業へ転職するという考えも出にくく、長期間にわたって同じ企業に働き続ける傾向があります。株式会社イーディアスが、2019年に実施した「2019年春入社の新入社員へ緊急アンケート」によると、3年以上働きたいと思える企業の条件として、「良好な人間関係」「待遇や福利厚生の充実」が上位に挙がりました。満足度を高めることによって、企業にとっても人材の流動を抑えられるほか、優秀な人材を確保しやすい点がメリットです。
特徴② 企業のビジョンや目標を共有している
従業員満足度の高い企業は、企業のビジョンや目標を共有している点が特徴です。業務内容への不満が少なく、企業の将来を考えながら働ける人材であるため、結果的に業績アップにつながる可能性を秘めています。
また、従業員が企業と共にビジョンを共有することで、帰属意識を高められるのがメリットです。所属しているチームや、個人での目標に対してモチベーションを維持しながら業務を行えるため、生産性向上にも期待できます。
特徴③ 従業員が働きやすい環境が整っている
従業員満足度が高いということは、働きやすい環境が整っていることも考えられます。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業でテレワークが導入されました。また、働き方の改善を目的として、ワーケーションやオンライン営業といった新しい取り組みを実施している企業も少なくありません。
株式会社HRビジョンが、2020年7月に発表した「人事白書調査レポート2020 働き方」によると、50%近くの回答者がテレワークを経験しているほか、ワーケーションへの興味も高いという結果が出ています。
社会的な事情に合わせて多様な働き方を可能とすることで、さまざまな事情を抱えている従業員が働きやすい環境を構築できます。職場環境は、従業員が働く上で欠かせない要素であり、従業員満足度の高さにも直接的な関係があるといえます。

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従業員満足度を高める方法
従業員満足度を高めるためには、効果的な方法を実践しなければなりません。ワークライフバランスの向上、企業体質といった従業員の不満につながりやすい根本的な原因を改善する必要があります。また、コミュニケーションを活発化させ、従業員同士や上司との壁を取り除くことも重要です。
方法① ワークライフバランスの向上
従業員満足度を高める方法として、ワークライフバランスの向上を目指すことが大切です。満足度が低い要因として、業務量が多くて残業が頻繁化していることや、休日出勤が多くて家族と過ごす時間が少ないといった点が挙げられます。
エン・ジャパン株式会社が2020年に実施した「ワークライフバランス」満足度調査によると、年々満足度が増加しているものの、依然として30%ほどと低い数字が続いています。
ワークライフバランスは、従業員満足度を指標化する上で重要な要素にもなるため、企業全体で解決に向けた取り組みが必要です。アンケートやインタビューを実施し、従業員がどのような改善を望んでいるかを把握しましょう。
方法② 企業体質の改善
企業の古い文化や体質を改善することによって、従業員満足度を高められます。従業員満足度の低い企業では「企業ファーストの考え」「トップによるワンマン経営」「昔から続く企業の悪習」といった従業員が不満に感じる要素が多く存在している可能性があります。
また、インターネットやSNSを通して情報が飛び交う現代では、自社とほかの企業との違いを簡単に調べられるようになりました。自社に対する不満点を抱えている従業員を減らすためにも、満足度の高い企業を参考にしながら、企業の体質改善が求められます。
方法③ コミュニケーションを活発化させる
従業員満足度を高めるためには、コミュニケーションを活発化させることも重要です。従業員同士や上司とのコミュニケーション機会が少ないことによって、業務への相談・フィードバックを行えないことや、適切な人事評価を受けられない可能性があります。
また、従業員が不満と感じている点を調べる際にも、コミュニケーションは必要不可欠です。上司と従業員がスムーズなコミュニケーションを行うことで、お互いの信頼性も高まり、結果として満足度の向上につながります。
企業の従業員満足度向上に対する取り組み事例
従業員満足度を向上させるために、各企業がさまざまな取り組みを実施しています。ここでは、従業員満足度を高めた企業の事例を紹介します。
自社製品の魅力を伝えることでモチベーションを高めた企業A
企業Aは、オフィス関連製品を販売する会社です。顧客に製品を売るためには、まずは従業員自身がその製品の魅力を知ることが大切だという観点から、オフィス内にショールームを設置しました。
自社の製品をいつでも手に取れるようになったことから、製品に対する理解度が増すとともに、製品の魅力を踏まえながら積極的に販売できるようになりました。また、90%を超える従業員が、オフィスの使い勝手や見た目がよくなったと回答しています。
「近距離通勤支援」により集中して働けるようになった企業B
家計の都合で遠方から通勤し、勤務開始時にはすでに疲れ切っている従業員もいます。そのような問題を解決するために、B社は「近距離通勤支援制度」を取り入れました。会社から3キロ以内に住む従業員に月2万円を支給するというものになります。
これにより、満員電車の疲労や長時間通勤が解消されたことに加え、プライベートの充実や自転車通勤による健康増進にもつながり、従業員満足度が大きく向上しました。
会議のスリム化を図り、時間を捻出したC社
C社では頻繁に開催される会議が単なる情報提供の場になっており、内職をしたり、眠気を感じたりしながら参加する従業員も多く、従業員の負担になっていたといいます。そこで役員自らが会議のスリム化に乗り出しました。
会議で発言をする可能性がある従業員のみ参加し、発言の可能性がない従業員は参加しない、情報提供のみの会議の場合は会議自体を取りやめる、狭い部屋を積極的に利用し会議に参加できる人員を制限するなどの取組みを実施しました。
時間に余裕ができることで、従業員満足度の向上だけでなく、残業時間短縮などにもつながった優れた事例といえるでしょう。
まとめ
従業員満足度とは、ES(Employee Satisfaction)とも呼ばれ、職場環境、業務内容、働き方など、さまざまな要因によって評価された指標です。従業員満足度を高めるためには、自社に合った効果的な手段を選ばなければなりません。
また、企業にとっても従業員満足度は、業績アップや経営方針に影響を与えることから、ワークライフバランスや企業体質といった根本的な問題を解決する必要があります。アンケートやインタビューも活用し、従業員満足度の向上に取り組みましょう。
・本記事の内容は、公開日時点の情報をもとに作成しています。
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