
公開日:2020.06.22 | 更新日:2021.03.16
テレワークの助成金・補助金制度、対象企業と申請内容とは?
国が推奨する働き方改革から、時間や場所に縛られない柔軟な働き方を実現するスタイルとして注目され始めた「テレワーク」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として、急速に導入が進む事態となりました。今回は、テレワーク導入の現状とポイント、利用できる助成金について、まとめてご紹介します。
東京都では、76.2%の企業がテレワークを導入済み!テレワーク実践企業とその実施内容
一口にテレワークといっても、業種や事業規模により、形態は様々です。情報や通信、金融、保険、サービス関連など、事務・営業を中心とする業種は、もともとテレワークとの相性が良い事業活動ということもあり、導入が進んでいる傾向にあります。新型コロナウイルス感染症の影響後は、特に導入事例が増加し、東京都防災ホームページによると、2020年4月の都内においては、76.2%の企業(事務・営業職が中心の業種)がテレワークを導入済みでした。
一方、建設や製造、運輸、医療、小売といった現場作業や、対人サービスが基本の業種では、ややテレワークへの切り替えが難しい面があるものの、同じ東京都の調査では、55%にまで導入企業の割合が上昇していました。3月の調査からは、40ポイントも増加しており、急速な導入対応がなされていると分かります。
具体的な事例をいくつかみてみましょう。
テレワークの先進企業といえる、ソフトウェア開発のサイボウズ株式会社は、2010年8月から在宅勤務導入に着手しており、約10年の運用実績があります。徐々にブラッシュアップされてきた同社のテレワークシステムは、グループウェアにチャット、Web会議システムと、オンライン上のオフィス環境整備に力を入れたものとなっています。
従業員へのサポートとしても、情報漏洩につながる端末の利用を防ぐ、テレワーク専用ガイドラインを作成・周知する、また、監視圧力を強めすぎず、皆で取り組むテレワークとして心理的安全を確保する、といったように、多くの工夫がなされています。これらは、長年の取り組みとして、成功の秘訣が詰まったものといえるでしょう。
運輸サービスでは、全日本空輸株式会社の取り組みが先進的です。同社は部署の特性に合わせながら、テレワークとモバイルワークを進め、育児や介護との両立をしやすくしたり、部門の垣根を越えたコラボレーションを促進させたりすることで、効率的な業務推進とワークライフバランスの双方を実現させてきました。
客室乗務員や地上係員などの現場スタッフにおいても、情報共有や教育・訓練、マニュアル確認などで、モバイルワークを活用しています。非常時の事業継続だけでなく、人材確保や生産性の向上、創造性向上につながるテレワークの良事例で、同社はさらなるテレワークの運用拡大・制度改良にも積極的です。

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テレワークの導入を支援する助成金制度
テレワークの導入は魅力的と考えていても、必要機器やシステム整備、運用にかかる設備投資の資金不安から、一歩が踏み出せないという事業者は多いでしょう。しかし、そうしたハードルを低減するものとして、テレワーク導入を支援する複数の助成金制度があります。特に現在は、新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、国や自治体からの特別な助成金が多く設定されているので、上手く活用しましょう。以下、代表的なものをご紹介します。
厚生労働省の働き方改革推進支援助成金
厚生労働省では、働き方改革の取り組みに賛同する事業者を支援する助成金制度を実施しています。この中の「テレワークコース」では、資本金や常時雇用の労働者数の上限を設け、その条件を満たした中小事業者のうち、テレワークを新規導入する事業者、または継続活用する事業者への助成がなされます。
テレワーク用通信機器の導入や就業規則の作成・変更、労務管理担当者への研修、スタッフへの周知・啓発、外部専門家によるコンサルティングなどの取り組みが行われたことが支給条件で、これらの取り組みに要した経費の一部が、目標達成状況に応じた補助率を乗じた額で支給される仕組みです。
詳細については、こちらに記載の厚生労働省「働き方改革推進支援助成金」をご確認ください。(*本情報は、2020年6月15日時点のものです。最新情報については、上記サイトを必ずご確認いただき、サイト内に記載された情報を正としてください。)
2020年はこれに加え、特別に「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」が設定されました。こちらでは、助成対象の取り組みが派遣労働者のテレワークや、必要機器のレンタル・リースも含まれるようになるなど拡充され、テレワーク実施の労働者が1人以上いれば、要件を満たすとされています。支給額は該当経費の半分で、1企業あたり100万円が上限額です。
詳細については、こちらに記載の厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)」をご確認ください。(*本情報は、2020年6月15日時点のものです。最新情報については、上記サイトを必ずご確認いただき、サイト内に記載された情報を正としてください。)
東京都の助成金
東京都では、公益財団法人東京しごと財団の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」という仕組みにより、条件を満たす中小企業のテレワーク導入支援を行っています。必要機器の購入費や設置・設定費、保守などの業務委託料やサポート料、機器リース料金、クラウドサービスなどの利用料と、対象が広く、助成金額もかかった費用の全額になるなど、充実しています。1企業あたりの上限額は250万円です。
詳細については、こちらに記載の公益財団法人東京しごと財団「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」をご確認ください。(*本情報は、2020年6月15日時点のものです。最新情報については、上記サイトを必ずご確認いただき、サイト内に記載された情報を正としてください。)

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対象者と申請期間/申請の流れについて
厚生労働省と東京都の助成金について、申請方法や条件を少し詳しく整理しましょう。
厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金」は、労働者災害補償保険の適用事業主であることや、全対象事業場で36協定を締結していること、年5日の年次有給休暇の取得に向けた就業規則などを整備していることなどが条件で、資本または出資額が小売業・サービス業で5,000万円以下、卸売業で1億円以下、その他では3億円以下となっているか、常時雇用の労働者数が小売業で50人以下、サービス業で100人以下、卸売業100人以下、その他業種は300人以下のいずれかを満たす必要があります。
基本はテレワークの新規導入事業者ですが、過去に受給していても、対象労働者を2倍に増加してテレワークに取り組む場合、2回まで申請可能です。支給対象は、テレワーク用通信機器の導入・運用や就業規則・労使協定などの作成・変更、労務管理担当者や労働者への研修、外部専門家によるコンサルティングといった取り組みになります。注意点として、シンクライアント端末(パソコン)の購入費用は対象ですが、それ以外のPC、タブレット、スマートフォンなどの費用は対象になりません。
成果目標として、期間中対象労働者全員に1回以上テレワークを実施させること、対象労働者がテレワークを実施した回数が週平均で1回以上となることを目指すよう打ち出されており、交付決定日からの事業実施期間のうちで1~6か月間、任意で設定した評価期間に、この目標が達成されたかどうかで助成額を算出する補助率が変わります。
達成された場合は、対象経費の4分の3、1人あたり上限額が40万円、1企業あたり上限額が300万円となり、未達成の場合は、対象経費の2分の1、1人あたり上限額が20万円、1企業あたりの上限額が200万円になります。
その年の12月1日まで(予算額制限により早期受付締め切りの場合あり)に、テレワーク相談センターへ、事業実施計画を添付した交付申請書を提出すると、厚生労働省で審査が行われ、交付するか否かの決定・通知がなされます。交付が決定したら、事業を実施して支給申請書を3月1日までにテレワーク相談センターへ提出、審査に合格すると助成金が交付されるという流れです。
公募要領:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」
(*本情報は、2020年6月15日時点のものです。最新情報については、上記サイトを必ずご確認いただき、サイト内に記載された情報を正としてください。)

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一方、特別に設けられた「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」は、先述の規模条件などを満たす中小事業者で、感染症対策としてテレワークを新規、または試行的に導入する企業ならば、対象となります。
助成対象の取り組みには、やはりシンクライアント以外の端末購入費用が含まれないものの、5月31日までの利用・支払い分に限り、レンタルやリースの経費も対象になります。助成対象の事業実施期間は、2020年2月17日~5月31日ですが、機器納品の遅延などでこの期間での実施が困難な場合、6月30日、または交付決定から2か月を経過した日のいずれか遅い日までの延長が認められます。
助成金額は経費の2分の1で、1企業あたり上限額は100万円です。申請は、やはり事業実施計画書などを添付した交付申請書をテレワーク相談センターに、5月29日までに提出し、厚生労働省の審査を受けます。交付通知を受け取り、導入実施期間が終了したら、テレワーク相談センターへ支給申請書を提出します。こちらの締め切りは7月15日で、問題なく認められれば支給されます。
公募要領:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)」
(*本情報は、2020年6月15日時点のものです。最新情報については、上記サイトを必ずご確認いただき、サイト内に記載された情報を正としてください。)
次に東京都の助成金をみてみましょう。
こちらは常時雇用する労働者が2人以上999人以下で、都内に本社か事業所を置いていること、都の「2020TDM推進プロジェクト」に参加していることが主な条件です。「2020TDM推進プロジェクト」とは、オリンピック開催時の混雑緩和に向けた交通需要調整を行う取り組みで、こちらに協力表明をすることが求められています。
助成対象費用には、テレワーク必要機器の購入費や設置・設定費、保守運用にかかる業務委託料、導入サポート費用、機器リース料金、クラウドなど、サービス利用料まで幅広く含まれ、厚生労働省の助成金で対象外だったシンクライアント以外のPCやタブレット、スマートフォンといったデバイス購入費用も可となっています。
助成金額は対象経費の100%で、1企業あたりの上限額は250万円です。申請は事業計画書兼支給申請書など、必要書類を5月12日までに東京しごと財団へ郵送して行います。審査ののち、支給決定通知が届くので、テレワーク導入を6月30日までに完了させ、実績報告書を作成して再び東京しごと財団へ郵送します。締め切りは7月31日で、問題なく進行すれば、該当額の助成金を受け取ることができます。
公募要領:公益財団法人東京しごと財団「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」
(*本情報は、2020年6月15日時点のものです。最新情報については、上記サイトを必ずご確認いただき、サイト内に記載された情報を正としてください。)
その他の助成金について
その他の助成金についても、みてみましょう。
経済産業省の「IT導入補助金2020(特別枠)」
経済産業省からも、利用できる補助金の制度が提示されています。中小企業などが自社の課題に合ったITツールを導入し、業務の効率化や売上アップを図ることに活用してもらうことを目的とした「IT導入補助金」で、この中に新型コロナウイルス感染症による事業活動への影響を踏まえ、非対面型ビジネスモデルへの転換やテレワーク整備を進めた事業者を対象とする「特別枠(C類型)」が新たに設けられました。
業種・業態ごとで設定された条件を満たす国内の中小事業者で、ソフトウェア費や導入関連費、機器レンタル費が補助対象になります。補助率は3分の2以内ですが、一部については4分の3に引き上げられており、1企業あたり30万円を下限、450万円を上限としています。
申請期間は2020年5月上旬~12月下旬の予定で、申請に必要な情報を入力・送信し、補助事業を実施、事業実績や効果の報告をすることが求められます。申請には『gBizID』プライムアカウントの取得など、事前準備も複数必要ですので、確認の上進めてください。補助金額は事業実績報告の完了後に確定し、交付となります。
詳細については、こちらに記載の経済産業省「IT導入補助金2020(特別枠)」をご確認ください。(*本情報は、2020年6月15日時点のものです。最新情報については、上記サイトを必ずご確認いただき、サイト内に記載された情報を正としてください。)

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厚生労働省のもう1つの助成金、職場意識改善特例コース
厚生労働省による「働き方改革推進支援助成金」では、職場意識改善特例コースがあり、こちらも新型コロナウイルス感染症対策でテレワーク環境を整備した場合に適用できることがあります。従業員が安心して特別休暇をとれるよう取り組む中小企業を支援するもので、労働者災害補償保険の適用事業主であり、先述の厚生労働省が示す「中小企業」の条件を満たしていれば、対象になりえます。
労務管理ソフトの導入・更新やテレワーク用の通信機器導入・更新などが取り組み対象ですが、こちらの機器には原則として、PCやタブレット、スマートフォンは含まないとされています。助成金額は、経費合計に4分の3を乗じた額か、1企業あたりの上限額50万円のいずれか低い方となります(一部例外あり)。
申請期間は2020年5月29日までの予定でしたが、7月29日までに延長されました。2月17日~7月31日の期間に取り組みを実施し、必要書類の提出による申請と報告などを様式にしたがって行えば、助成金を受け取ることができます。詳しくはホームページや各都道府県労働局へお問い合わせください。
詳細については、こちらに記載の厚生労働省「職場意識改善特例コース」をご確認ください。(*本情報は、2020年6月15日時点のものです。最新情報については、上記サイトを必ずご確認いただき、サイト内に記載された情報を正としてください。)
補助金の利用方法。どんなものが購入できる?
まず、テレワーク導入には、社員同士の情報交換やコミュニケーションを図るためのツールやWeb会議システム、ビジネス利用に耐えうる安全な通信ネットワーク(VPN)などが必須となります。また、労働状況が見えるオフィスと違い、勤怠管理方法が大いに問題となるため、労働時間や仕事量を確実に管理するツールやシステム整備に力を入れることがポイントとなります。決裁資料のやりとりや給与計算などを紙媒体で行っている場合、この機会にシステム化を図り、デジタルベースにするとスムーズでしょう。これらのクラウドサービス利用やファイルサーバー整備も、補助金の使い道として考えられます。
なお、利用する助成金により、対象となる機器などが異なるため、購入と申請はセットで、注意深く確認しながら進めるようにしましょう。
業務を円滑に進めるテレワークで便利なツール
テレワークを円滑にする便利ツールもみてみましょう。これらの利用料金や導入費に助成金を用いることができるケースもあります。
まず必須といえるのは、Web会議システムです。新型コロナウイルス感染症の流行で利用が急増した『Zoom』はその代表格でしょう。クラウド上でのオンライン会議やチャット機能を統合したビジネスコミュニケーションプラットフォームで、安定した通信と手軽さで人気です。無料プランでも最大40分、最大100人のグループ会議が可能となっています。
ビジネスチャットツールの『Slack』は、テレワーク向けにも利便性の高いコミュニケーションツールで人気があり、メッセージのやりとりはもちろん、ファイル共有、リマインダーのセットなどが可能です。

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テレワークでワークライフバランスと生産性の向上を
テレワークは従来の働き方や業務フローを大きく変えるものとなるため、導入に際しては大きな不安があるかもしれません。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響拡大で認識されたように、緊急時の事業継続で大いに力を発揮します。
国や自治体の助成金が充実している今こそ、導入を本格的に検討する絶好の機会ではないでしょうか。導入を諦める前に、ぜひ一歩踏み出すことをご検討ください。
テレワークの導入と併せて検討したいのが、フレキシブルオフィスの活用
テレワーク導入にあたっては、従業員が安全かつ生産的に働ける環境を整備することも重要です。テレワークの導入を検討する際は、併せてフレキシブルオフィスの活用も検討しましょう。
WeWork(ウィーワーク)は、フレキシブルオフィスを運営しています。
WeWork では、最短月単位での契約が可能なため、ビジネスや組織の状況に合わせて、契約を柔軟に変更いただけます。
さらに、契約から入居を最短1か月で実現できます。インターネット、ドリンク、会議室、セミナールーム、電話ブースなど、テレワークを快適に行うために必要な設備も、すべて完備しています。
テレワークの導入・環境整備をご検討をされている方は、ぜひ WeWork にお問い合わせください!
参考ソース:
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1007261/1007864.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/telework_10026.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/kinkyutaisaku.html
https://2020tdm.tokyo/
https://www.it-hojo.jp/procedure/
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisiki.html
https://jp.cybozu.help/ja/o/admin/sys/s05/
https://telework.cybozu.co.jp/
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/furusato-telework/search-case/index.html
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/furusato-telework/search-case/category-1/tag-4.html
・本記事の内容は、公開日時点の情報をもとに作成しています。
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