
公開日:2020.08.24 | 更新日:2022.05.17
オープンイノベーションとは?意味やメリット・企業の成功事例を紹介
社会が急速に変化をしている中で、企業は、世の中で必要とされているニーズに応えなければなりません。しかし、技術の進歩やプロダクトサイクルの短期化が進んでおり、自社のリソースだけで対応するのは困難な時代となっています。そこで、「オープンイノベーション」という考え方が広がっています。オープンイノベーションとは、どのようなものであるかを、具体例やメリットを挙げながらご紹介します。
【目次】
- オープンイノベーションとは?
- クローズドイノベーションとの違い
- オープンイノベーションの背景
- 日本におけるオープンイノベーションの現状
- 日本でもオープンイノベーションが注目されてきた理由
- オープンイノベーションを導入するメリットとは?
- オープンイノベーションを取り入れるための課題
- まとめ
オープンイノベーションとは?
オープンイノベーションとは、自社が持っている研究機関や組織以外から、開発や技術のノウハウを取り入れる経営戦略の1つです。もともとは、2000年代初頭に、ハーバード・ビジネススクールの教授であるヘンリー・チェスブロー氏によって提唱されたもので、社外からも新しい意見や知恵を活用していくことで、イノベーションの創出につなげられる可能性を秘めています。
海外のトップ企業は、すでにオープンイノベーションの概念を取り入れた経営を行っている一方で、日本企業は後れを取っているのが現状です。人口減少に伴い、日本市場が縮小していることや、世界の技術力が高まっている中で、オープンイノベーションに対して真剣に向き合わなければならない時代となりました。
クローズドイノベーションとの違い
オープンイノベーションに対比される言葉として、「クローズドイノベーション」という表現があります。クローズドイノベーションとは、自社の研究機関など組織内のみで完結し、新たなイノベーションを創出させることです。つまり、社内と社外に境目が存在しているかが、オープンイノベーションとの違いです。
クローズドイノベーションは、これまで日本企業で採用されていた考え方です。競業他社よりも優れた技術の独占や、流出防止が可能であるほか、自社のみで完結するため、利益もその分増えます。しかし、時代の流れに対応しにくいことや、自社のみでの開発に莫大な投資や時間をかけなければならないという点が、デメリットです。

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オープンイノベーションの背景
オープンイノベーションという言葉が使われるようになった背景には、それぞれの企業が市場での生き残りに危機感を抱き始めたという状況が関係しています。一昔前であれば、大企業というブランド力があれば、自社の商品やサービスが売れていました。また、研究にかけられる資金や優秀な人材を多く持っており、同じ大企業の競合他社のみに注意するだけで、利益を得られるような時代であったといえます。
しかし、急速に技術が進歩している中で、プロダクトライフサイクルの期間が短くなっていることや、新興国の発展などにより、消費者のニーズがますます多様化しています。さらに、大企業が持っていないような技術を生み出すベンチャー企業も増えていることから、多額の投資が行われるようになり、大企業でなくても、潤沢な経済力を得ることが可能となったのです。
つまり、大企業の優位性は、過去と比較をして、必ずしも市場において大きな影響があるとはいえない状況となりました。従来採用されていたクローズドイノベーションの考え方だと、絶え間なく変化する市場に、大企業でさえも取り残されてしまう危険性があります。このような事態を打破するためにも、外部とのつながりを強化するというオープンイノベーションの考え方が広がりました。
日本におけるオープンイノベーションの現状
技術の流出防止や国内市場を重点としてきた日本企業では、昔からクローズドイノベーションの考え方が主流となっています。また、中小企業を中心に、開発研究の予算が限られてしまっていることや、取引先から商品の発注を受けてから、仕様にあった物を製造するプロセスが一般的であるため、自社が主体的となって新しいサービスを創り出す機会自体が多くありません。
そもそも、オープンイノベーションを取り入れやすいスタートアップ系の企業と、大企業とでは、経営的な戦略が異なります。スタートアップ系企業は、いままでになかったようなサービスを打ち出し、新たな顧客を獲得して、利益を生み出すことが目的です。
一方で、大企業は利益を獲得するという点は、スタートアップ企業と同じでありながらも、それまでのプロセスに大きな違いがあります。これまでの培った技術を継続させながら、安定的に顧客数を維持し、数年にわたる長期的な経営方針を立てることが、大企業の経営戦略です。

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日本でもオープンイノベーションが注目されてきた理由
とはいえ、すべての日本企業がオープンイノベーションに消極的ということではありません。大企業でも、積極的に自社の経営スタイルを見直し、外部との連携や新たなアイデアの取り組みを推奨している企業も増えてきました。
また、文部科学省内でも、オープンイノベーションに対して注目が高まっています。グローバルでの競争が激しくなる今日において、国としてもオープンイノベーションのマインドを提唱することで、企業が積極的に取り入れなければならない時代となったのです。
オープンイノベーションを導入するメリットとは?
オープンイノベーションを導入するメリットは、自社にはないアイデアやノウハウを外部から柔軟に取り入れられることです。例えば、事業に行き詰まっていた企業が、オープンイノベーションによって外部との連携を深められることが、例として挙げられます。新たな商品・サービスの創出につながる可能性を生み出したり、互いの相乗効果を高めたりすることで、市場の活性化につなげられるのがポイントです。
また、オープンイノベーションの導入によって、開発研究のコストダウンや、生産プロセスの短期化にもつなげられます。
メリット① 外部の新たな知識や技術の獲得
クローズドイノベーションとは異なり、オープンイノベーションでは、自社にはない新たな知識や技術の獲得ができます。クローズドイノベーションでの環境下では、新しい商品やサービスを創り出すために、開発研究など一から進めていかなければなりませんでした。すべての利益を自社に還元できるものの、多くの時間や資金を必要とし、製品化したところで、消費者にとっては時代遅れの物になっている危険性があります。
オープンイノベーションの導入により、自社と同じ領域に位置する企業からだけでなく、異業界の企業からのアイデアや情報を得ることで、これまでに考え出せなかったようなイノベーションの創出も実現可能となります。自社にとっても、新しいノウハウを蓄積できるという面もあるため、将来の成長に向けても大きなメリットとなるでしょう。
メリット② 事業推進のスピードアップ
オープンイノベーションの導入は、自社の事業推進におけるスピードアップを期待できます。外部のリソースやマーケティング手法をフル活用することで、自社独自で扱える枠を越えた幅広い戦略が可能となるためです。
また、これまでクローズドイノベーションでは対応しきれなかった分野にも進出できるようになるため、激しく変化するニーズを的確に抑え、企業価値を効果的に高められます。
メリット③ 短期間・低コストでの開発
1から新たにモノづくりを始める場合、一般的には、製品化するまでに莫大な時間と資金を投資しなければなりません。そこで、外部のリソースを利用し、自社の研究機関に投資していた開発コストの削減や期間の短期化を実現できます。
既存の技術などを有効に活用することで、スキルを持つ人材の雇用や、研究などに対する内部コストの削減につなげられます。結果として、自然に新しいノウハウが貯まっていくことから、中長期的に見て、大幅なコストダウンを期待できる点が、オープンイノベーションのメリットです。

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オープンイノベーションを取り入れるための課題
日本国内でオープンイノベーションの概念を浸透させるには、障壁を乗り越えなければなりません。
例えば、日本企業が最も懸念としている「技術の流出」です。対策として、社外とアイデアやリソースを交換する際に、共有していい情報とそうでないものを区別しておきましょう。結果的に、自社にとって、不利益とならないようなシステムづくりが必要です。
また、それぞれの企業が、形だけのオープンイノベーションにならないような進め方が、重要なポイントとなります。自社に直接的なメリットを生み出さない外部とのつながりや、各種イベントに参加をするだけでは、オープンイノベーション本来の効果を得られません。
多くの日本企業にとっては、経営者を含めた会社の組織自体が、オープンイノベーションに対して正しく理解を深めていくことを求められています。
オープンイノベーションの事例
オープンイノベーションには、どのような成功事例があるのでしょうか。各企業におけるオープンイノベーションで成功した事例を紹介します。
事例1.食品メーカーA社
大手食品メーカーA社では、社内ベンチャー制度を設けることでオープンイノベーションを達成しました。既存の組織に頼るのではなく、新しい組織を立ち上げて社内の活性化につなげています。社内ベンチャー制度自体は真新しいものではありませんが、IT企業以外での事例はまだまだ少ないのが現状です。
事例2.アパレルメーカーB社
国内外で事業を展開するアパレルメーカーのB社は、外部企業と連携し、オープンイノベーションを推進しています。これまでに、服の素材メーカーと協力するなかで数々の大ヒット商品の開発に成功してきました。
事例3.家電メーカーC社
家電メーカーのC社は、今後のグローバル化に向けて、世界各地にオープンイノベーション専用の拠点を設けました。東京、北米、欧米、中国の4拠点にオープンイノベーション施設を設置し、消費者行動やグローバルな知見を収集し、新しいサービスの開発に力を入れています。
まとめ
社会のあらゆる変化に対応するために、企業はオープンイノベーションの概念を取り入れた経営が重要とされています。これまでのクローズドイノベーションでは、商品やサービスを製品化するまでに、莫大な時間と費用をかける必要があるため、結果的に、需要がピークアウトしてしまったというパターンが存在していました。
しかし、オープンイノベーションによって、自社だけでなく、外部のリソースを積極的に活用することで、新たな知識の獲得やコストダウン、さらには短期化といったメリットを通じて、消費者の幅広いニーズに応えられます。課題は多いものの、国内だけでなく、世界でも通用する企業に成長するためには、オープンイノベーションの導入が不可欠といえるでしょう。
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