
公開日:2020.09.25 | 更新日:2021.03.16
「集中のプロ」井上 一鷹さんに学ぶ、在宅ワークで集中するために不可欠な条件
働き方改革の推進や、昨今の社会情勢により、在宅ワークをする人が増えています。
在宅ワークをされている人の中には、私生活と仕事を切り分けが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか?
今回は、株式会社ジンズホールディングスの井上 一鷹さんをお招きして開催したオンラインイベントのレポート第2弾。
在宅ワークで生産性を上げるための条件を、科学的見地からより踏み込んで解説いただきました。
(第1弾のレポートはこちら「集中のプロから学ぶ、在宅ワークで生産性を保つ3つのコツ」)
取材:Innovation Formula実行委員会(MGT田口雅典、稲垣 章)
「仕事はオフィスが一番はかどる」は勘違い!?

井上 一鷹さんはこれまでJINSにおいて、メガネに組み込まれたセンサーでまばたき・視線移動・姿勢などを読み取り、スマホアプリから集中力を計測・可視化できるメガネ型のウェアラブルデバイス「JINS MEME」(ジンズミーム)の事業開発を担当されてきました。現在は同社ソロワークスペース事業「Think Lab」(シンクラボ)でプロジェクト担当者も兼任しています。
「6年前、リニューアルしたばかりのJINS本社において、JINS MEMEを使ってさまざまな場所における集中力を計測しました。対象とした場所は、自社オフィス、喫茶店、公園、図書館、新幹線、ホテルロビーの6つです」
計測結果から見えてきたのは、『オフィスが一番集中できていない』という事実でした。
<集中できている時間の割合>
- オフィス 43%
- 図書館 67%
- 新幹線 70%
- ホテルロビー 77%
- 喫茶店 83%
- 公園 97%
「人が深い集中状態に入るのには平均で23分かかると言われていますが、オフィスでは平均11分に一度、話しかけられたり、メールやチャットが届いたりするという調査結果があります。つまり、そもそもオフィスは深い集中をすることには、適していない場所なんです」
「集中をつくる」ための6つの要素

では、深い集中にはどのような要素が必要なのでしょうか。
井上 一鷹さんは「集中を上げる因子が25種類あり、集中をつくるためには6つの要素がある」といいます。
1.視覚:視界に入る情報量の最適化
2.嗅覚:アロマ(集中を促す香り)
3.聴覚:森や川などの自然音
4.光量:朝・昼・夕方・夜の時間変化と人間の体内時計に合わせた調光と調色
5.デスク&チェア:「収束思考」「発散思考」それぞれに適したデスクとチェアの高さ
6.集中したいときに1~5が整った環境を手に入れられること
オン・オフを切り換えにくい、コロナ時代の在宅ワーク
井上 一鷹さんは、理想的な働き方について、次のように語ります。
「経営学者、チャールズ・A・オライリーが知の深化と知の探索による『両利きの経営』を唱えていますが、それと同様に、みんなでCo-workする時間と1人でDeep Thinkする時間の両方を取れないと生産性は高まりませんし、イノベーション創出の確率も上がりません。両方を備えるワーク環境や仕組みを整備するのが、理想的な働き方だと考えています」

ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、会社やコワーキングにみんなで集まって働くようなこれまでの働き方は抑制され、自宅を含むソロスペースでの在宅ワーク・テレワークが急速に広がりました。井上 一鷹さんのお話を踏まえれば、「集中できる時間が増えた」ともいえるのかもしれません。
しかし現実は、そうとばかりはいえないようです。
特に、ワンルームなど部屋数が少ないマンションやアパートで暮らしている場合は、仕事部屋を用意することはかなわず、生活スペースで仕事のオン・オフを切り換えなければなりません。beforeコロナなら電車などでの移動時間がオン・オフ切り換えに作用していましたが、在宅ワークではプライベート時間の次の瞬間に、Zoom会議などの仕事が始まってしまいます。
「我々はもちろん、集中を科学し、それをどのように提供していくのかという左側の世界(スライド青色部)をこれからも追究していくつもりです。しかし、我々が培ってきたノウハウは、目下進行している右側の世界(同オレンジ色部)にもお役立てできるはずです」

「ましてやbeforeコロナで都内企業は、平均7万円以上×従業員分の設備投資をかけていた計算になるのですが、2ndプレイス(職場)を縮小せざるを得ない withコロナ・afterコロナの時代下では、その7万円以上に当たる原資を、1stプレイス(自宅)あるいは3rdプレイスに割り当てることもできます」
在宅ワークの集中を妨げる阻害要因とは
イベントで井上 一鷹さんは、在宅ワーク時の集中阻害要因についても整理しながら、自宅の限られたスペースで集中時間をつくるためのアイデアを紹介してくれました。
「なぜ、私たちは在宅ワークで仕事に集中できないのか。それは、仕事とプライベートで行っていたあらゆる社会空間・役割が自宅という場所1カ所に集められているからです。ここに図示しただけでも在宅ワーク時、ワーカーには6つの役割が課せられています」

そうした中でポイントになるのは、やはり「オン・オフの切り換え」だといいます。
「部屋を移動することによる切り替えが無理なら、物理的な切り換えを用意し、それを同居する家族と共有するのが、おすすめです。例えば、子育て中なら『キッチンのテーブルでパソコンに向かっているときは、仕事中だから、ジャマしてはダメ』というような家庭内ルールをつくっておくことで、在宅での集中の度合いが変わってくるかと思います」
Think Labでは、上記の要素を取り入れた「Deep Think」(深い集中状態)に特化した空間を数多く開発、提供しています。さらに、Think Labで得たノウハウを詰め込んだ、誰でも簡単に手に入れることができる自宅用のブース型書斎『Think Lab HOME(シンク・ラボ ホーム)』の販売も開始されました。

まとめ
これまでの時代は、多くの会社員と同じようなデスク・パソコンを会社から与えられ、いわば同じような条件・環境下でビジネスを競い合っていました。
しかし、このコロナ禍でそうした価値観は一変し、仕事条件・仕事環境を自分で選ぶ時代が到来していきます。在宅ワークを含めたコワーキングスペースにおいても、集中できる条件・環境下を自ら積極的に整えていくことが、より重要になっていくでしょう。
サードプレイスとしての活用事例も増加している WeWork (ウィーワーク)であえば、会社を越えた繋がりを求めることのできる 共用エリアと、より集中できる環境「プライベートオフィス」や「電話ブース」の両方をご利用いただくことが可能です。
是非、生産性の高いテレワーク実現のためにご活用ください。

WeWork 電話ブース
井上 一鷹さんプロフィール
1983年生まれ。大学を卒業した後、戦略コンサルティングファームにて事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。その後、株式会社ジンズホールディングスに入社。JINS MEMEの事業開発を経て、株式会社Think Labの立ち上げ、取締役を務める。
執筆もしており、代表作に「集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方」がある。