
公開日:2019.11.18 | 更新日:2020.06.18
【三菱自動車工業・QUOカード・ZeBrand登壇】大企業がWeWork で実現する新規プロジェクトとは? -イノベーション創出の秘訣に迫る
2019年10月16日、WeWork アイスバーグ(原宿)において、WeWork(ウィーワーク) 主催のイベントが開催されました。テーマは「大企業がWeWorkで実現する新規プロジェクトとは?—イノベーション創出の秘訣に迫る」です。
ゲストとしてお招きした三菱自動車工業・QUOカード・ZeBrandは WeWork に入居するメンバーで、いずれも自らが所属する企業の新規事業けん引役です。
皆さんは、いかにして“イノベーションのジレンマ”を突破したのでしょうか。それぞれの体験から、新事業に挑む思いの強さと実行力があふれていました。
取材:Innovation Formula実行委員会(MGT田口雅典、稲垣章)
出島をつくり、自由気ままに動ける領域を確保せよ
本イベントでは、今まさにWeWorkを舞台に新規事業を推進する3社による説得力のある事例がシェアされました。
最初は、事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に挑んだ、株式会社クオカード デジタルイノベーションラボ室長・瀧上宜哉氏です。
2000年に住友商事株式会社に入社した瀧上氏は、20代から30代半ばに数々の新規事業立ち上げを担当。2012〜13年にはイノベーション研究のためにスタンフォード大学に留学したキャリアを持っています。帰国後、住友商事が出資する株式会社ティーガイアのスマートライフ事業本部に出向。

2017年ティーガイアによるクオカード株式取得に伴い、以降は同社デジタルイノベーションラボの準備室長となり、現在は室長を務めています。
デジタルイノベーションラボが立ち上げた新規事業は、2019年3月にリリースされた「QUOカードPay」(スマホから簡単に送れるデジタルギフト)です。クオカード社が長年展開してきた磁気カード型のQUOカードを、モバイルで使用できるものにしたサービスです。
2018年4月には、クオカード本社(日本橋)から徒歩圏内にある WeWork 丸の内北口にデジタルイノベーションラボを開設、従業員約170名のうち10名前後のメンバーでスタートを切ることになりました。
現在は WeWork 東京スクエアガーデン(京橋)に入居しており、リモートワーク、フレックスタイム制、服装自由など、本社とは違ったカルチャーで、新しいものを生み出す意識が環境から整えられていきました。他企業とのコラボレーションのきっかけはラボ開設早々にやってきます。
WeWork のラウンジで、入居企業である株式会社サムライパートナーズと出会い、そこからスピーディーにペヤング×QUOカードPayのコラボ企画が進行、そしてQUOカードPayの周知に繋がりました。
関連記事:WeWorkだからこそ実現!QUOカードとサムライパートナーズによるコラボレーション
瀧上氏は「大企業の中でイノベーションを興すのは相当に難しい」と話します。そんな中で“新規事業を成功させていく秘けつ”は「出島をつくること」。出島とは本社から離れた環境で新事業に挑むことを指します。
「外に出島をつくり、自由に動ける領域を確保できれば、新しいことにチャレンジしやすくなります」新しいビジネスパートナーとの出会いも含め、WeWork は出島を置く場所として好適なワークスペースであることを自ら証明したといえます。
自社単独は⾮現実的。異業種も含めた仲間づくりを
2人目の登壇者は、三菱自動車工業株式会社 グローバルIT本部 デジタルイノベーション推進部 担当部長の小野航氏です。
自動車業界は今、100年に一度の改革期を迎えています。その変化はCASE——Connected(つながる)、Autonomous(⾃動運転)、Shared/Service(共有/サービス)、Electric(電動化)に集約できると言われています。
そんな時代にあって三菱自動車工業も、「最新ICT活用と社内外のビックデータを一元的に管轄・分析し、新ビジネス創出に対して、プロアクティブに支援する組織」として「デジタルイノベーション推進部」を昨年春、同社グローバルIT本部内に新設しました。

同年12月からは推進部メンバーのうち6名がWeWork東京スクエアガーデンに入居。現在は「⾃動⾞産業の⼤変⾰を⾒据えた新ビジネス企画・開発」「さまざまな企業とのネットワーキング」をミッションに活動しています。
入居後の2019年1月、小野氏らが WeWork アプリのフィード上で入居したことを知らせると、すぐに多くの企業からレスポンスがあったといいます。
入居している企業と意見交換する機会にも恵まれ、3月には他の入居企業から紹介されたVR系スタートアップやデジタルマーケティングの株式会社TANDENとともに、自動車ショールームのバーチャル化に関するPoC(概念実証)を開始。8月よりタイやプエルトリコで試験的に展開を始めたそうです。
「最初からそうしたソリューションを探していたわけではありませんでしたが、いろいろな人と話をして『何かできないか?』と考えているさなかに、ビジネスの種がおのずと生まれてきた」と振り返る小野氏。
セッションの最後には「新しいビジネスモデルに挑戦する際、そこに付帯する課題の全てを自社単独で解決することは⾮現実的です。だからこそ異業種も含めた仲間づくりが必要」と、エコシステムが生まれやすいWeWorkの効果に触れます。
“Brand your way” -誰もがブランディングできる世界を
「グローバルビジネス展開」事例セッション3人目の登壇者は、株式会社ZeBrandでセールス/マーケティングを担当する赤生悠馬氏です。
“モリサワフォント”で知られるフォントの老舗ベンダー株式会社モリサワの新規事業部門「MORISAWA BRAND NEW Lab」として2017年10月に発足し、今年10月1日に日本で法人化したばかりの同社。
「グローバルビジネスを見据えた米国市場向け新規事業」を目指す赤生氏らは「“Brand your way”—誰もがブランディングできる世界」を実現する海外市場向け新規事業として「ZeBrand」というソリューションを開発しました。

アーリーステージスタートアップや10名前後のスモールチーム、ノンクリエイティブに該当するような起業家のためのウェブサービス。ユーザーが会社のビジョンやミッション、企業カルチャーに関係する簡単な質問に答えていくだけで独自の「ブランドツールキット」が自動生成され、キット内では独自アルゴリズムとAIによって、その企業のコーポレートカラーやフォントなど、ブランディングに必要な“素材”を提案してくれます。
2019年2月に開始したプロトタイプは開始5ヶ月間で、ユーザー数は2万人にも上ります。赤生氏を含む同社コアメンバー6名はWeWork丸の内北口に入居しています。
メンバーは、海外イベントに参加したりZeBrandのサービス説明会を開催したり国内外のWeWork拠点に積極的に出向き、WeWork コミュニティをフル活用しています。赤生氏は「米国市場に向けてサービスの認知度を高めるのに、WeWorkの海外拠点を活用している」と話しました。
日本法人設立に続き、アメリカでも法人を設立したZeBrand。「法人設立に当たっては、WeWorkで出会ったコミュニティの仲間たちがお祝いをしてくれました。そんなアットホームさにも魅力を感じます。」と話す赤生氏。WeWorkにはZeBrandを盛り上げるチームメンバーが大勢いるように見受けられます。
WeWorkは「自然発生的なつながりがある場所」
後半のパネルディスカッションではスピーカー3名が登壇し、WeWork入居後のメリットや成果を話し合いました。
Q1.WeWork入居後、会社全体で起きた最も大きな変化とは何でしょうか?
瀧上氏:やはり、採用活動でしょうか。当初入居していた WeWork 丸の内北口のある丸の内周辺は、いわゆるITの発信地ともいえる渋谷系スタートアップとも雰囲気が違います。そんな場所に魅力を感じる30代くらいの即戦力エンジニアにとって、WeWork はかっこうのワークスペースに映るようで、着実に優秀なエンジニア採用に繫がりました。
小野氏:出会いの機会が増えましたね。大企業にいると打ち合わせ1つするのも大変ですが、WeWorkだとアポなしで気軽に会ったり、話したりできる。まるでシリコンバレーにいるかのようなネットワークがここにあると感じます。
Q2.WeWork入居後、はじめに取り組まれたことは何だったでしょうか?
赤生氏:実は当初「2カ月限定の入居」という条件で入居したのですが、私たちは、WeWork を出ていく気は一切ありませんでした(笑)。短期間で結果を出すため、WeWork でのネットワーキングに力を注ぎました。毎日各拠点で開かれているイベントに積極的に顔を出すことで、一気にネットワークの輪が広がりましたね。
小野氏:どこのWeWorkにも必ずといっていいほどキーとなる顔の広いメンバーさんがいらっしゃいますし、WeWorkのコミュニティチームのサポートがあるので、助かりますね。
瀧上氏:私たちがサムライパートナーズさんとご一緒したきっかけもそうだったのですが、ラウンジで「ちょっとビールでも一緒に」と言い合える、自然発生的な「ゆるいつながり」に魅力を感じます。

Q3.イノベーション創出を掲げている大企業が直面しがちな課題と、その解決策とは? また、そのときに理想的な組織とは?
瀧上氏:ある程度大きな企業、あるいは歴史のある企業だと、組織風土的な課題からイノベーションが起こりにくい、とはよく言われることですよね。クオカード社もおよそ30年の間にいくつもの新規事業プロジェクトがありましたが、なかなかうまくいきませんでした。
今回のプロジェクトにおいて、過去の新規事業プロジェクトを担当してきた経験から私が特に気を付けたのは、会社のトップと話をすることでした。
小野氏:特に大企業のイノベーション創出は、ある種トップダウンで進めなければならない面があると思います。イノベーションは1〜2年間で成果を出せるものではありません。しかし効果が出ないと、社内から突っ込まれかねません。そんなときにイノベーションを後押しするトップと実行部隊がつながっていないと、頓挫することが起こりかねません。
WeWork:ZeBrandさんはモリサワからスピンアウトしたイノベーション部隊です。クオカードさん、三菱自動車工業さんと少し立場が異なりますが、モリサワ本体との合意形成はどう進めてきたのでしょうか?
赤生氏:モリサワという老舗企業の新規事業部門としてやっていくには、当社CEOでMORISAWA BRAND NEW Labの時代からリーダーを務めている菊池諒の存在が大きかったと思います。菊池はラボ発足以前から海外に出向き、自分の目で市場調査を行いました。
そのたび調査レポートをつくっては、モリサワにもたらされる効果を常に示しながらプロジェクトをけん引してきました。これは成功するかもしれない——、そんな圧倒的な結果、またその可能性を見せることが大事だと思います。
Q4.他企業と協業する際、接点はどのように生まれますか? また、その中で得た新たな気づき・発見は?
瀧上氏:先ほどお話しした「自然発生的なゆるいつながり」にも通じますが、明確に「誰かを求める」「何かを求める」というよりも「せっかく一緒にいるのだから話をしましょう」といったつながりの方が、新しいビジネスに発展すると思います。
WeWork:他の入居企業さんに話を聞いてみても、そうした出会いは意外に多いです。テレビでのスポーツ観戦がきっかけで関係性が生まれるなど、それはまさしくご近所付き合いのようなつながり。私たちもそうした関係性の醸成を期待しています。
Q5.最後に、WeWorkを一言で語ると何でしょうか?
小野氏:「つながり」ですかね。カジュアルにつながれることが最たるメリットだと思います。
赤生氏:「きっかけの場」です。これまでの価値観だと何年もかけてつくっていくような関係性が、WeWorkだと1カ月で構築できたりします。WeWorkに入居しているかどうかで与えられるチャンスが違ってくると思います。
瀧上氏:アメリカのWeWorkも拝見しましたが、WeWorkは「イケてる場所」。これからもここで面白い方々と出会いたいと思っています。
WeWork:本日はありがとうございました。
今回のイベントに登壇いただいたQUOカード、三菱自動車工業、ZeBrandのように、WeWork には新事業に挑む企業が数多く入居されています。普段接点を持つことがない業界、業種のメンバーと関わることで、多様な価値観に触れることができるのです。
WeWork では、今後も入居企業同士のコラボレーションやイノベーション創出をテーマとしたイベントを開催していきますので、乞うご期待ください。なお、WeWork のワークスペースに興味をお持ちの方は、まずはお気軽に見学ツアーにお越しください!